体験設計

新しい納豆体験を“日常”に落とす設計

たかちほ正史発酵蔵

2026/3/13

──たかちほ正史発酵蔵|工程ノート

「混ぜない納豆」という言葉だけだと、少し変わった納豆、で終わってしまうかもしれません。

でも、三代目と一緒に考えていたのは、珍しい納豆をつくることではなく、日常に入る新しい体験でした。

三代目が普段どう味を見ているのか。
どう食べると、この納豆の良さがいちばん出るのか。

そういう話を聞きながら、実際に味わいながら、その良さをどう生活の中に落とすかを、一緒に整理していきました。

1|新しいのに、ちゃんと日常で使えること

ここで大事にしたかったのは、
“新しい”と“日常で使える”を両立させることです。

新しい食べ方を提案するのは、簡単です。

でも、それが手間だったり、特別すぎたりすると、続かない。

三代目と話しながら見えてきたのは、冷蔵庫から出して、すぐに豊かな体験になることでした。

大げさな準備はいらない。
でも、食べた時には「いつもの納豆と違う」と感じる。楽しめる。

そのバランスを探っていきました。

2|食べ方から、一緒に整理していった

まず整理したのは、見せ方より先に「食べ方」でした。

三代目がどう味を見ているのか、どう食べるとこの納豆の良さが出るのか。
そこを起点に、体験の形を整えていきました。

混ぜない納豆の基本は、この流れです。

まずは、何もつけずに粒だけをひと口

最初に味わってほしいのは、粒そのものの旨みとコクです。

混ぜる前の状態で、もう成立している。
そこが、この納豆のいちばん大事なところでした。

次に、タレをかける。でも混ぜない

普通の納豆なら、タレを入れて混ぜます。
でも、この納豆は、この部分を変えました。

ご飯に粒をそのままのせて、タレを上からかける。
混ぜないことで、粒の食感と旨みが立つ。
粘りが前に出すぎず、粒そのものを楽しめる。

この食べ方を、体験の基本に置きました。

そこから、トッピングが広がる

混ぜないからこそ、粒の上に薬味や食材を“のせる”楽しみ方が成立します。

ここで、納豆のレシピの幅が一気に広がる。

つまり、

混ぜない=制限ではなく、
混ぜない=広がりでもありました。

3|「旅館の朝みたいな体験」をつくりたかった

この納豆の価値を考える中で、僕の中でいちばんしっくりきたのが、旅館の朝みたいな感じでした。

冷蔵庫から一袋出して、ご飯にのせて、タレをかける。
それだけなのに、ちょっと気持ちが整う。
朝ごはんが、少しだけ特別になる。

納豆って、そもそも日常の食べ物です。
でもこの納豆は、その日常のままで、ごちそう感をつくれる。

高価な食材を足さなくてもいい。
大げさな料理をしなくてもいい。
でも「今日はちょっといい朝だったな」と感じられる。

そこに、この納豆ならではの良さがあると思いました。

4|レシピは“映える”より、“続く”を優先した

レシピもかなり考えました。
でも、ここで目指したのは、単なる映えるレシピではありません。

もちろん、新しさは必要です。
意外な組み合わせも大事でした。

たとえば、

  • ミートソース

  • クリームチーズ

  • トマト

  • パクチー

今まで納豆と強く結びついていなかった食材も試しました。
ただ、いちばん大事にしたのは、粒が主役でいられることです。
だから、

  • 食材を増やしすぎない

  • 納豆が脇役にならない

  • ぐちゃぐちゃに混ぜない

  • 日常から遠くなりすぎない

このあたりはかなり意識して外しました。

「試したくなる」ことと、
「実際に続く」こと。

その両方を満たすレシピだけを残していきました。

5|朝だけじゃない。でも、日常から離れすぎない

この納豆は、朝がいちばん分かりやすい入口でした。
でも、朝だけのものではない。

たとえば、

  • 夜のおつまみ

  • 前菜っぽい使い方

  • チーズやワインとの組み合わせ

  • 贈り物としての提案

そういう広がりもあります。
実際、それはこの納豆の魅力のひとつです。

ただし、ここでも大事なのは、日常から離れすぎないことでした。

高級すぎる見せ方にすると、途端に自分ごとではなくなる。だから、少し特別。でも、ちゃんと生活の中にある。

その距離感を守るように整理していきました。

6|“成功体験”として続く形にする

考えていたのは、購入の瞬間だけではありません。

買って、食べて、
「よかった」「また食べたい」
「今度は別の組み合わせも試したい」

そこまで含めて、成功体験にしたかった。

混ぜない納豆は、ただ一回驚いて終わる体験ではなく、生活の中で、少しずつ楽しみが増えていく体験にしたかったんです。

そうなると、

  • レシピの提案が効く

  • 発信の方向性が決まる

  • 次の商品や企画にもつながる

  • 贈り物としての意味も深くなる

つまり、“日常に落とす”ということは、“続くブランドにする”ことでもありました。

まとめ

「混ぜない納豆」という言葉だけでは、まだ半分です。

本当に大事だったのは、三代目が大切にしてきた味わい方を、生活の中で続く体験として伝わる形にすることでした。

その良さをどう言葉にするか。どう食べてもらうと伝わるか。どう見せると期待が湧くか。

そこを一緒に考えながら、

「混ぜない」は、ただ珍しい提案ではなく、新しい納豆体験として形になっていったのだと思います。

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