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プロトタイプ
パッケージ
世界観の試作:ロゴの前に「体験の見え方」を確かめた話
たかちほ正史発酵蔵
2026/2/26
──たかちほ正史発酵蔵|工程ノート
「混ぜない納豆」というコンセプトが見えてきたとき、
すぐにロゴやパッケージを作り始めませんでした。
理由はシンプルです。
ロゴだけ、パッケージだけを作っても、コンセプトが正解かどうかが分からないからです。
“混ぜない納豆”という新しい体験が、パッと伝わるか。
埋もれていないか。
中身を知りたくなる空気があるか。
それを確かめるには、まず全体像が必要でした。
だから先に、世界観をプロトタイプとして作りました。

1|まずは体験設計(食べ方からつくる)
世界観を作る前に、最初にやったのは「食べ方」の設計でした。
コンセプトは言葉じゃなく、体験として成立しないといけない。
混ぜない納豆の基本は、この順番です。

まずは何も付けず、納豆だけをひと口
粒そのものの旨みやコクを、まず確認してもらう。タレをかける。でも混ぜない
混ぜると粘りが強く出て、粒の食感を粘りが邪魔してしまう。
だから、ご飯にそのまま乗せて、タレを上からかけて食べる。トッピング(“乗せる”楽しみ)
混ぜないからこそ、粒の上に薬味や食材を“乗せる”楽しみ方が成立する。
組み合わせ次第でレシピの幅が一気に広がる。
そこに「今までにない納豆の楽しみ方」が生まれる。
この体験が成立するかどうかを確かめるために、
最初の段階でレシピをある程度組んで、試しに撮影しながら確認していきました。
2|「混ぜない」を最短で伝える見え方を試作する
次に取り組んだのが、
パッと見て“混ぜない納豆”だと分かる表現を作ることです。
混ぜない納豆は、完成している。
混ぜなくてもコクと旨みが最大まで出ている。
その“完成品感”を、どう見せるか。
ここで鍵になったのが、事実としてのこれでした。

混ぜなくても、粘りが立つ。
たとえば、パックのフィルムを開ける瞬間。
フィルムを持ち上げたときに、すでに糸が立つ。
この瞬間を写真や映像で見せると、
「混ぜなくても成立する納豆なんだ」が直感で伝わる。
ただしこれは“入口”というより、その根拠となる表現でした。
「混ぜないって物足りなくない?」という不安をなくせるからです。
3|決め手になった3つの見え方
“混ぜない”を伝えるビジュアルは、1つに絞れませんでした。
体験の入口がいくつか必要だからです。
その中で主軸になったのは、まずこれです。

主軸:ご飯に粒をのせて、上からタレ
いちばん日常に近い。
そして「混ぜてない」が一発で分かる。
体験がそのまま伝わる絵です。
入口:粒だけスプーン寄り
「まずは何も付けずに、粒を味わってみてください」
このメッセージを、ビジュアルで成立させるための絵です。
“粒が主役”が一瞬で伝わる。
提案:俯瞰で複数トッピング
混ぜないからこそ成立する“乗せる”提案。
複数のトッピングを俯瞰で並べると、
「納豆がこんなに広がるんだ」が一瞬で見える。
この3つが揃うと、
「混ぜない=ただの逆張り」ではなく、
「混ぜない=新しい体験の提案」に見え始めます。
4|“これは違う”を作ることで、方向性が定まる
プロトタイプの段階で、僕たちは「なし」を何度も作りました。
混ぜない、ということが伝わらない
特別すぎて日常から離れる
きれいだけど、期待が湧かない
この「なし」を明確にするほど、
逆に「この方向だ」がはっきりしてきます。

今回も、この「違う」をはっきりさせることをかなり大事にしました。
“違う”を言語化すると、正解が定まる。
コンセプトは、そうやって磨かれていく気がします。
検証
僕たちだけの感覚で決めたくなかったので、複数案を並べて、一般の知り合いにも見てもらいながら反応を確かめました。
すると、説明なしでも「混ぜない」が一発で伝わる絵と、伝わらない絵がある。
伝わらないものは、きれいでも、日常で食べるイメージが湧かない。
だから、迷いが出た案は外して、一発で伝わる見え方だけを残しました。
5|説得力のある素材も揃える(人・水・現場)

体験は、きれいに見せるだけだと薄くなる。
だから「なぜそれが成立しているのか」を支える素材も揃えました。
三代目が味見をしているカット
香りを嗅いで確認しているカット
霧島の名水(都城・霧島山系の源流)など背景の要素
“混ぜない”を言い切るために、
裏側の誠実さが伝わる素材を、ビジュアルでもサポートします。
6|パッケージは「日常と特別感」を両立させる(やりすぎない)
パッケージで意識したのは、
特別感は欲しい。でも、やりすぎないことでした。
日常の朝ごはんが、ごちそうになる。
でも過剰包装にすると、日常から遠ざかる。
逆に日常すぎると、ごちそう感が出ない。
そこで僕たちは、方向性をこう決めました。
過剰包装しない。
イメージとして近かったのは、
ちょっといいお肉屋さんでお肉を包む紙の感覚。
丁寧だけど、過剰ではない。
“中身に自信がある”感じが残る。

たまたま採用されていた容器が、紙製で素材感が強く、縦ラインが美しい。
以前はその上に厚紙をぐるっと巻いていたけれど、
それをやめて、容器の良さをそのまま活かす。
そして細い掛け紙だけをかける。
結果的にこれが相性が良く、
日常感と特別感の両方を残しながら、ちゃんと中身に目が行く形になりました。
世界観の比喩で言うなら、
のれん。
そして、良い和菓子屋さんのような「シンプルだけど中身が美しく見える」空気。
7|結局、僕らが先にプロトタイプを作る理由

今回、最初に世界観のプロトタイプを作ったのは、「混ぜない納豆」という新しい体験が、パッと伝わるかを先に確かめたかったからです。
最短で伝わる表現になっているか。
埋もれていないか。
期待したくなる体験として見えているか。
全体像を先に作って、検証しながら決める。
今回は、その順番で制作を組み立てました。
次に読む
なぜブランド名を変えたのか?(高千穂工場 → たかちほ正史発酵蔵)
ロゴや世界観の前に、まず名前をどう考え直したのか。
混ぜない納豆:コンセプトが生まれた背景
「混ぜない」という言葉が、どうやって核になったのか。
写真・キービジュアル:混ぜない体験を写すルール
“混ぜない”を、一瞬で伝わる見え方にするための話。
※本記事は許諾を得た範囲で、工程の考え方を記録しています。
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