
プロトタイプ
体験設計
撮影
写真・キービジュアル:混ぜない体験を写すルール
たかちほ正史発酵蔵
2026/2/26
──たかちほ正史発酵蔵|工程ノート
僕が写真で一番気になるのは、きれいに見えるだけで終わってしまうことです。
せっかく新しいコンセプトをつくっても、写真でそこまで表現できなければ、ただきれいなだけの写真に戻ってしまう。
それでは埋もれてしまうし、せっかくの新しい体験も伝わりません。
だから今回は、体験が伝わる型を決めるところから始めました。
たかちほ正史発酵蔵の写真でやりたかったのは、「納豆の説明」ではなく、混ぜない体験の入口をつくることでした。
1|写真は「売り場」と「発信」で役割が違う
写真は、使う場所によって役割が変わります。

EC/LP:混ぜない納豆の基本を伝えながら、その先にある新しい体験まで見せていく場所
広告:混ぜないことが一瞬で伝わりつつ、「なんだろう?」と止まりたくなる入口をつくる場所
SNS:新しい納豆体験を、レシピや提案で広げていく場所
SNSは、レシピ提案の場。
一方で、EC/LPと広告は、まず基本が伝わらないと入口として弱くなる。
ただ、広告はシンプルに分かるだけでも弱いので、混ぜないことが伝わることを前提にしながら、まだ見たことのない納豆体験への期待も少し感じられることが大事でした。
EC/LPでは、まず分かりやすく伝える。そのうえで、買ったあとに広がる新しい体験の幅まで見せていく。
今回は、そういう考え方で写真を組み立てました。
2|“混ぜない”を一瞬で伝える写真には、型がある
混ぜない体験を写すために、外せないカットがあります。
今回、軸になったのは主にこの3つでした。
① ご飯に粒、上からタレ(主軸)

これがいちばんわかりやすい。
日常のシーンに近いのに、混ぜていないことが一発で分かる。
“混ぜない”の基本形を、そのまま写せるからです。
まず混ぜないことが伝わること。そのうえで、「これはちょっと気になる」と思ってもらえること。
このカットには、その両方の役割がありました。
② 粒だけスプーン寄り(入口)

「まずは何も付けずに、粒だけで味わってみてください」
その入口を、写真だけで伝えるためのカットです。
ここで見せたかったのは、
粒が主役であること。そして、一粒一粒にちゃんと旨みが詰まっていることでした。
この納豆は、まず粒だけで食べてもらいたい。
その自信が伝わる写真にしたかったんです。
③ 俯瞰で複数トッピング(提案)

混ぜないからこそ成立する“乗せる”提案です。
複数のトッピングを俯瞰で並べると、「納豆がこんなに広がるんだ」ということが一瞬で見える。
このカットは、SNSで特に効くと感じました。“新しい納豆体験”が、見ただけで伝わるからです。
ただ、何でも組み合わせればいいわけではありません。
混ぜない納豆の粒がちゃんと主役になること。
日常の食卓に無理なく入ること。
その前提を崩さない提案だけを残していきました。
3|フィルムの糸は、「本当に混ぜなくていいんだ」と納得してもらうためのカットだった

「混ぜないって、物足りなくない?」
これは、必ず出る不安だと思っていました。
そこで写真で撮ったのは、フィルムを外した瞬間の糸です。
混ぜていないのに、糸が立つ。
この事実が、「混ぜないでも成立する」という根拠になる。
これは入口というより、納得してもらうためのカットでした。
体験を後押しする“証拠”として置いています。
4|“これは違う”をはっきりさせることで、方向性が定まった

プロトタイプの段階で、今回も「なし」を何度も作りました。
混ぜないことが伝わらない
きれいだけど、毎日の食卓に入る感じがしない
きれいだけど、期待が湧かない
粒が主役になっていない
この「違う」をはっきりさせるほど、逆に「この方向だ」が見えやすくなります。
今回も、そこをかなり大事にしました。
検証
僕たちだけの感覚で決めたくなかったので、複数案を並べて、一般の知り合いにも見てもらいながら反応を確かめました。
すると、説明なしでも「混ぜない」が一発で伝わる絵と、伝わらない絵がある。
伝わらないものは、きれいでも、日常で食べるイメージが湧かない。
だから、迷いが出た案は外して、一発で伝わる見え方だけを残しました。
5|トーンのルールは、「旅館の朝」「のれん」「良い和菓子屋」
トーンを一言で言うなら、「旅館の朝」です。
でも実際は、朝だけではありません。
おつまみや前菜、チーズとのペアリングもある。
だから今回は、僕の中ではこういう空気でまとめていました。

旅館の朝
日常が少しごちそうになる感覚
のれん
凛とした品、日本の食の空気
良い和菓子屋
シンプルだけど、中身が美しく見える感じ
俯瞰のトッピングは、特に和菓子の感覚に近かったです。
並べた時にきれいで、見ただけで期待できる。
そういう静かな強さが欲しいと思いました。
6|撮影の実務ルールも、「体験を撮る」ために決めた
実務のルールも、ただきれいに撮るためではなく、体験をどう写すかのために決めています。

光:自然光+ライトでコントロール(明るすぎない)
明るさ:暗すぎず、明るすぎず。料理がちゃんと見える範囲で空気を残す
背景:濃い古材(蔵の空気、日本の食の空気)
器:作家ものの陶器中心。柄は控えめ
文字入れ:基本しない(写真そのもので伝える)
生活感が出すぎると特別感が消える。
でも、世界観に走りすぎると今度は日常の食卓から離れてしまう。
その間を、レシピの内容や、光と器と余白でつくっていきました。
7|今回は、写真の役割を分けて組み立てた
全部を一枚で伝えるのは無理です。
だから今回は、役割を分けて写真を組み立てました。

入口:ご飯+タレ、粒だけスプーン
提案:俯瞰トッピング、混ぜないからこそ広がる、新しい食べ方
根拠:フィルムの糸
信頼:三代目の味見、水、現場
全部をどこかで伝える。
その積み重ねで、世界観ができていく。
今回は、そういう考え方で整理していきました。
まとめ
今回の写真で大事にしたこと

きれいに見えることを前提に、“混ぜない”という体験がちゃんと伝わること
“普通っぽい”写真に戻さないこと
入口・提案・根拠・信頼を分けて考えること
美味しそうに見えることは、絶対に外さないこと
写真は装飾ではなく、体験を最短で伝える入口だと思っています。
次に読む
ECファーストビュー:混ぜない体験を一瞬で言い切る
最初の一画面で、何をどう伝えたのか。
→ 読む(現在執筆中)
世界観の試作:ロゴより先に見え方を確かめた話
ロゴやパッケージの前に、なぜ全体像を試したのか。
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「混ぜない納豆」は、どう“買われる形”になったか
コンセプトや体験が、ECや発信でどう機能したか。
→ 読む(現在執筆中)
※本記事は許諾を得た範囲で、工程の考え方を記録しています。
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