MANIFESTO

どうして僕が、今こういう仕事をしているのか。
それを話そうとすると、やっぱり自分のこれまでを抜きには話せません。
少し長い話になりますが、よければお付き合いください。
僕は、最初から「全部をやろう」と思っていたわけではありません。
ただ、やっていく中で、これだけでは届かない、これだけでは売れない、と何度もぶつかってきた。
そのたびに必要なものを増やしていった結果、今の形になりました。
デザインを整えたのに、効果がなかった。
クライアントから喜ばれたのに、売上が動かなかった。
あの時のことは、今でも忘れられません。
だから僕は、作って終わりにしない。
届く形にして、売り場で機能させて、続くところまで育てる。
そのために、必要なことを全部つなげて扱う。
それが、今の僕の仕事です。
でも、最初からそう考えていたわけではありません。
ここに至るまでには、その都度ぶつかって、足りないものを一つずつ拾ってきた経緯があります。

僕は、宮崎の小さな印刷所で育ちました。
高校を出たら家業を継ぐ。そんなつもりで、東京の印刷専門学校に入りました。
でも、入学して間もない頃に言われたひと言が、今でも忘れられません。
「これからの時代、印刷だけやっていては生き残れない」
印刷をやるつもりで来たのに、印刷だけではダメなのか。
じゃあ、どうすればいいんだろう。
本当に衝撃でしたし、かなり焦りました。
でも、その言葉が、僕の最初の原動力にもなりました。
今振り返ると、あの時すでに大事なことを教えてもらっていたんだと思います。
印刷だけやっても厳しい時代がくる。
就職は、印刷会社ではなく、美容業界の企画デザイン会社に入りました。
企画もデザインも未経験ですが、何かしら印刷につながればという思いで。
配属された企画部。企画やデザインの経験はないので、やりながら覚えていきました。
上司や先輩も親切に教えてくれましたが、未経験なので追いつかない。
ただ、あの時代は、徹夜も休日も当たり前で、ひたすら仕事していました。
でも現場で少しずつ手応えが出てきて、
「デザインでやっていけるかもしれない」と思える瞬間が増えていきました。
そうして6年間やって、実家に戻ることにしました。
「デザインもできる印刷所」にしよう。そう決めました。
自社に戻って、しばらく経った頃のことです。
美容室の販売促進の仕事を請け負うことになりました。
オープンチラシでした。
それなりにこだわって作りました。
デザインにも自信がありました。
オーナーさんにも喜んでもらえて、「これはいい」と言ってもらえた。
僕も、本気でそう思っていました。
いよいよオープン当日。
でも、来客はかなり少なかった。
店舗オープンは、オーナーさんにとって大きな節目です。
その大事な場面で力になれなかったことが、本当に悔しかった。
いろいろ学んできたつもりだった。
でも、全然届いていなかった。
あの空気は、今でも忘れられません。
見た目が良いだけじゃ、人は動かない。
その現実が、胸の奥に深く刺さりました。


そこから僕は、ダイレクトマーケティングを学び始めました。
神田昌典さんの本に出会って、「感情を動かす順番」があることを知ったんです。
その後、神田さんの「顧客獲得実践会」に入り、毎月届くニューズレターを読みながら、事例を自分の仕事に落とし込んでいきました。
オファーを一緒に考えたり、手書きを入れてみたり、オーナーのストーリーを前に出したり。
とにかく試して、試して、試しました。
そうすると、少しずつ反応が変わっていった。
そのとき掴んだ感覚が、今の僕の原点になっています。
いろいろ学んだことはあります。
でも、ひとつだけ挙げるなら、やっぱりこれです。
埋もれないこと。
折り込みチラシは、一瞬で捨てられる。
だから必要なのは、ただ目に止まることだけじゃない。
ちゃんと記憶に残ること。
他と違う存在として感じられること。
心が動いて、「ちょっと見てみよう」「行ってみよう」と行動につながること。
僕にとっての「埋もれない」は、そういう意味です。
僕の中では、それがずっと原点にあります。
美容室の現場で反応を見ながら学んでいた頃、
友人づてで、ドラッグストアさんのネットショップの紹介をいただきました。
「楽天を始めているから、一度会ってみないか?」
そんなきっかけでした。
「メルマガを書けませんか?」と声をかけられて、それまで現場で学んできたことを活かして書いてみたら、初回で即日完売。
かなり驚きましたし、同時にすごく嬉しかったです。
その実績が縁になったのか、ちょうどそのタイミングで、その会社さんが初めてプライベートブランドの商品を立ち上げることになりました。
「全部、やってみませんか?」
と声をかけていただいた。
ネーミングから、パッケージ、メルマガ、そして商品ページ。ひとつの商品を世に出す全体を、初めてまるごと担当することになりました。
当時のECは、画像と説明文を並べるような商品ページがまだ多かった。
でも僕は、まず最初の画面で
「自分ごととして感じてもらえるか」
「この先を読んでもらえるか」
を強く意識しながら作りました。
今でいうLPの原型みたいなものを、この現場で初めて本格的に形にしたんだと思います。
良いものでも、伝わり方で結果はかなり変わる。
その感覚が、今の仕事にもずっとつながっています。
その後、このブランドは、この初年度から数年で、急成長を遂げることになります。
こういう経験を重ねながら、ある違和感がだんだん強くなっていきました。
「この商品は、立て付けを少し変えるだけでもっと強くなるのに」
「元の企画や設計に課題があると、表現だけでは届かせきれない」
だから僕は、だんだん上流から入るようになりました。
企画、コンセプト、売り場の構成。ひとつずつ見ていくうちに、結局、全部がつながった時にいちばん成果が動く、という感覚が強くなっていきました。

デザイン支援の仕事には、ずっと本気で向き合ってきたつもりでした。でも、ある時ふと、「自分で売る側に立ってみたい」と思ったんです。
本当に自分で売れるのか。
支援ではなく、当事者として。
その“真実”を、自分で確かめたくなりました。
自社ECサイトと楽天を運営しました。PB(プライベートブランド)もつくりました。
やってみて、すぐに分かりました。

世界が、違いすぎる。
広告、在庫、物流、顧客対応、CRM。
全部が自分ごとになる。
お金を自分で出して広告を回し、クリックされるたびに数字が動く。
売れない時は、お金がただただ減っていく。
その感覚を知ってから、支援の仕事に対する責任の重さも変わりました。
今も支援サービスをしていますが、EC運営者の気持ちは本当によく分かります。
だから僕は、クライアントに無駄なコストを使わせたくない。
ちゃんと成果が動くように、最短で効く順番で進めたい。
その視点で、今も支援をしています。
自分でECサイトをやりはじめて、一番大きく変わったのはここでした。
せっかく出会えたお客さんと、どう繋がり続けるか。
多くのエネルギーをかけて、ようやく出会えたお客さん。
その人たちと、一生涯いい関係で繋がりたいと心から思いました。
喜んでもらって、期待してもらって、また次も楽しみにされたい。
役に立って、ずっと愛される存在でありたい。
そういう気持ちが、ここまではっきり生まれたのは、自分で売る側に立ってからでした。
それまでも大事だとは思っていたけれど、当事者になって初めて、その重さが体で分かったんです。
そこで初めて
「ブランディングって買われるまでの話じゃないんだ」
と分かりました。
買って終わりではなく、その先も続いていく。
期待が積み上がっていく。
そこまで含めて考えないと、本当の意味で強くならない。
でも同時に、こうも思ったんです。
その関係は、最初にちゃんと伝わらないと始まらない。
強みも、人となりも、なぜ始めたかも、どんな体験を届けたいのかも。
そこが最初に伝わらなければ、共感も期待も生まれない。
買って終わりじゃない関係も、その先には続いていかない。
そう考えるようになって、僕の中でのブランディングの意味が変わっていきました。
ブランディングといえば、「世界観をつくる」イメージがあります。
世界観は大切です。ものすごく大切。
でも僕にとってのブランディングは、それだけではありません。
僕にとってブランディングは、
「全部を最短で伝えること」です。
強みも、人となりも、ブランドの人格も、なぜ始めたかも。
商品やサービスを使っている時や、その後の幸せな体験も。
埋もれず最短で伝わって、心が動き、買われて、信頼が生まれて、関係が続いていく。
買って終わりじゃなく、「次が楽しみ」になる状態まで含めて設計する。
ユーザーが最初に見てくれるのは、一瞬です。
言葉だけでは、一瞬で心を動かして信頼まで届けるのは難しい。
世界観だけでは、買う理由までつながらない。
だから僕は、
強みも、人となりも、体験も、
全部を最短で伝えることを、ブランディングだと考えるようになりました。
埋もれたら、結果が残る前に終わる。
だからまず、埋もれない。
それが今でも、僕の中の出発点です。


自分でECを運営して、売る側の重さや現実を体で知ったこと。
その経験を通して自分の中で固まってきたブランディングの考え方は、この現場でもかなり大きかったと思っています。
その流れの中で、深く関わらせていただいた現場のひとつが、
タマチャンショップさんでした。
今でこそ、ネットショップでも「ブランディング」という言葉はよく使われます。でも当時は、そういう言い方や整理はまだほとんどありませんでした。
それでも現場では、言葉・見え方・売り場を一緒に見ないと成果が動かない。
そんな感覚が、ずっとありました。
食に対する想い、商品の良さ、サービスの良さ、環境の良さ。
そういうものを、どうすれば最短で伝えられるか。
そのことを、一緒に考え続けた現場でした。
何よりすごかったのは、
ビジョンへの熱量と、マーケティングを実行していく力です。
僕はもう、リスペクトしかありません。
一緒に取り組む中で、タマチャンショップさんは大きく成長されました。
僕自身は、その中のほんの一部分かもしれない。でも、同じ方向を向いて仕事ができたことは、僕のキャリアの中でも本当に有意義だったと思える仕事のひとつです。
※2011年〜2021年。当時所属していた組織(前職)での業務として関与した内容です。
※2025年〜うもれんデザイン研究所にてデザイン伴走を行っています。現在の伴走については別途整理して記録します。
ここまでが、今の仕事に至るまでの道のりです。
最初から「全部やりたい」と思っていたわけじゃない。
必要が出てきて、ひとつずつ覚えた。
壁にぶつかって、「これだけじゃ成果が出ない」と痛感して、また必要なものを覚える。
その繰り返しでした。
デザインを磨いた。
でも、見た目が良いだけじゃ人は動かない。
文章が必要だ。構成が必要だ。導線が必要だ。
売り方が必要だ。広告が必要だ。運用が必要だ。
そもそも商品企画が弱いと、表現で盛っても限界がある。
だったら上流から入るしかない。
そうやって、成果を出すために必要だと思ったことを取りにいった結果、領域が広がっていった。気づいたら、今の僕はそれら全部を扱っています。
器用だから全部やっているわけではない。
必要だったから、全部やるようになった。
僕にとっては、ただそれだけです。
そして今、うもれんデザイン研究所としてやっていることも同じです。
作って終わりにしない。
選ばれる理由をつくって、買われる形に落として、続くところまで育てる。
埋もれない理由を、ひと続きで実装する。

もし今、「商品やサービスには自信があるけど、届かない」
そんな状態なら、まずは一緒に、埋もれている正体を見つけましょう。